若草学園の実践ブログblog

2脚の椅子

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園外の方から椅子の寄贈がありしばらく児童棟の前に置いてありましたが、入所の山下課長から児童棟の廊下に置こうかと提案があり、ステーションの入り口の前に置く事になりました。

 

初めのうちは子どもたちが入れ替わりながら座っていました。自閉症のR君。いつもは自分の部屋の前や、廊下の窓の近くにずっと立ち廊下に失尿を繰り返していました。声をかけてもなかなか動いてはくれず、そのせいか冬になると足の血流が悪く、靴下もなかなか履いてくれない為凍傷になってしまいます。今年の春先も例年よりひどい凍傷で通院も余儀なくされていました。

 

ある時スタッフの一人が、座ると少しは違うかもと椅子に座るよう声を掛けると短時間ではありますが座ってくれました。そこで、スタッフも椅子に座り横に座るよう促すと、椅子に座る時間が次第に長くなってきて、今では失尿もほとんどなくなり、私も横に座ると顔を覗いて笑顔を見せてくれるようになりました。

 

自閉症の子どもの多くは言葉によるコミュニケーションがむずかしく、関わりに困難な事例が多い中で一つの成功例だと感じました。何気なく置いた2脚の椅子に子ども達が集まり、そこにスタッフも参加し知らず知らずのうちに関わりができ、R君の心にも何か変化をおこしたのではないかと思います。勿論全てが今回のようにうまくいくとは思いませんが、多分、廊下に立ち失尿を繰り返ししていたのは自分に振り向いて関わって欲しかったのかもしれません。

 

きっと今年の冬は凍傷も酷くならないのではと期待しています。

入職して一年と2カ月でこんな喜びと感動をもらえるとは思っていなかったので本当にうれしい出来事でした。スタッフ皆の努力と廊下に置く様提案して下さった山下課長、そして2脚の椅子に感謝です。

 

 

 入所部 看護師 米村郁子