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たいせつなこと

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「たいせつなこと」

 子どもたちと一緒に過ごすことが多くなり、絵本を身近に感じるようになりました。そんなある日、「たいせつなこと」(フレーベル館)という絵本が目にとまり開いてみることにしました。この本はアメリカのマーガレット・ワイズ・ブラウンさんが書いたものの翻訳絵本です。ご覧になられた方も多いと思いますが、何気なく読んでいくうちに考えさせられることがありました。

 今の社会はモノや情報が溢れ、多機能な新商品も次々に登場して宣伝されていることから、購買意欲をそそられてしまう。また、流通手段も整い、どこからでもスマホなどを使えば簡単に品物が手に入る便利な世の中です。百均に代表されるような大量生産された安価な品物も出回り、使い捨てに躊躇しないといったところもあります。そんな時代の流れに不安を覚え、ものに対する感謝の気持ちも薄れていくように感じていました。そんな時代に逆行するかのように、この絵本は私をふと立ち止まらせて、ものの役割やたいせつなこととは何かを語りかけ、考えさせてくれるものでした。

 絵本には表紙から各ページに渡り、落ち着いた雰囲気の懐かしいタッチの絵が描かれており、文字は全てひらがなでかかれています。これらが相って何だかやさしく語りかけているように感じました。この絵本に登場してくるのは、スプーンやくつなどのもの、草花やりんごといった植物、昆虫、あめ、ゆき、かぜ、そらなどの自然、そして最後に人のことが書かれています。そこに登場してくるひとつひとつが役割をもち、たいせつなものであることを教えてくれます。

 絵本の内容はそのまま書くことはできないので、スプーンの語りを箸に置き換えて勝手に書いてみました。原作のイメージが壊れてしまうとおしかりをいただくかもしれませんので、原作を読まれた方、批判をされたい方はどうか見ないで下さい、お願いします。

「おはしは たべるときに つかうもの てでにぎり くちにはこぶと あんぐと おさまり ほそながい にほんのぼうで さきのほうが すこしほそくなっていて ゆびさきでつまむように いろんなものを はさめる でも おはしにとって たいせつなのは それをつかうと おいしくたべられる ということ」

 絵本では、箸でなくスプーンについて、その形や使い方が語られていますが、おもしろいのは、スプーンにとってたいせつなのは、それを使うと上手に食べられる、とスプーンを主人公のようにしているところです。普段は何気なく使っているものでも、ものの立場になって考えてみると、人との関りがあり、なるほどそうだなと思わせてくれます。そして最後のページの人(あなた)へとつながっていき、そこには、「あなたは あなた あかちゃんだったあなたは…(中略)…でも あなたにとって たいせつなのは あなたが あなたであること」というように、あなたである赤ちゃんが大きくなっていくうちに、いろいろな経験をしていくけれど、もっともたいせつなことは「あなたが あなたであること」と、あなた自身の大切さに気づいてほしいという流れになっています。つまり、ありのままでいいんだよ、と語りかけているのです。人はそれぞれいろいろなことを感じ、大切にしていることも違います。私自身もそのことに気づかずに、子どもたちに自分の思いを要求しているところがあるのではと考えさせ、大切なことに気づかせてくれる絵本です。まだ読まれたことのない方は、機会があれば一度お読みになってはいかがでしょうか。

 余談ですが、この絵本を翻訳されたのは内田也哉子さん(父親は内田裕也、母親は樹木希林)です。

 

若草学園 通所部 

放課後デイサービス「おひさまぷらす」

 治部田 均