若草学園の実践ブログblog

「障がいの境界線」と「ライフスキル」

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発達障害者支援法が施行され、15年が経過しました。

急速に障害名は周知され、症状や対応方法も本やネットで検索すれば、たくさんの情報が溢れています。発達障害児者への支援方法として、よく言われていることは、①環境を整えること、②視覚情報を示すこと、③予告をすること、④具体的に伝えること、⑤成功体験を積み重ねること、⑥無理強いをしないこと等があります。既に、誰もが知り得るようになってきました。

ところで、「障がい」の境界線は、どこにあるのでしょうか?

              

1年365日、人は毎日同じ状態ではありません。子どもであればなおさらですが、日々歳を重ねていくわけですから変化していきます。また、誰にだって、良い心の状態の時もあれば、不安定な時(不安や焦りなど)もあるでしょう。できるだけ良い状態をキープするように、私たちは日々様々な角度で努力(工夫)し生活しています。

良い状態を自分で努力(工夫)することが出来、社会に適応し、自分自身で日常生活を送ることができれば、障がいにはならないでしょう。しかし、不安定な状態(不安や焦りなど)が多過ぎたり、誰かの手助けがないと日常生活(社会生活)を送れないことが多くなれば、「障がい」になるのかもしれません。

 

特に、発達障がいというと、対人関係スキルの課題(ソーシャルスキル)が注目されやすいのですが、様々な年齢層の相談を受けていると、日常生活に必要なスキル(身だしなみ、健康管理、住居、金銭管理、感情のコントロール、進路選択、外出、対人関係(マナーやルール)、余暇、地域参加等)の乏しい子どもや大人がとても多いことを感じます。

 

SST(ソーシャルスキル)は、もちろん大切なスキルですが、学齢期(中学生~高校生)までに培っておきたい力(人が人として生きていく最も大切な力:生きていく上での土台)は、「ライフスキル」だと感じます。頭が良いとか、成績が悪いとかではなく、「社会で適応できる力」です。

               

 

子どもの年齢に合った経験が必要です。家族が手伝い過ぎても力にならないし、かといって放っておいて自然に身につくものでもありません。

まずは、出来る・出来ないではなく、得意・不得意をよく見極め、得意な分野は積極的に伸ばし、苦手な分野はサポートすることが大切です。

 

知的な能力は高いのに、仕事が続かない・日常生活が送れない方がおられる反面、知的障害があっても、毎日コツコツと働き、社会の一員として地域で暮らし、結婚して地域の人の助けを借りながら、子育てをされている方もいらっしゃいます。こだわりが強く、どう見ても発達障がいの特性がある方でも、社会適応できている人(自分で生活し、自分らしく働いている人)も沢山いらっしゃいます。

「障がい」は、知的能力ではなく、今生きている社会の中でうまく適応出来ているか、毎日の日常生活行動が難なく行えているかに掛かってきます。

 

人と比べず、どうしても難しいところは、無理しないで人に頼れること。

現代の便利グッズ(スマホやタブレットなどのアプリ機能など)を駆使し、自分自身の安定した生活を送るためにも、どんどん取り入れ有効活用していくことが大切だと感じます。

 

相談支援センターいちばん星では、臨床心理士による①WISC-Ⅳ:発達検査、②Vineland(ヴァインランド):社会適応尺度、③感覚プロファイル:感覚尺度の3つの検査を行っています。子どもさんの場合、保護者の方の希望により行っていますが、これらの尺度を知ることは、将来、自立した大人になるための大きな指標になっていくと思います。

 

                           相談支援センターいちばん星 伊豆野良栄