若草学園の実践ブログblog

おばあちゃん先生の子育て回想録

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回想録、5回目になりました。今回は小学校入学後の長男の話です。

1~2年生のころに一番困っていたのは宿題です。
発達障がい児の親の会で、子どもの能力に合わせて宿題の量や内容を調整してもらうように学校にお願いすることを勧められ、担任の先生に相談しました。
先生は快く了承してくださり、プリントや漢字の量を減らしたり、分るところだけ記入するなど調整してくださいました。
ところが当の本人がみんなと同じようにしたいと言うので困りました。
宿題を提出する時にお友達に何か言われたのかもしれません。
宿題を先生に直接渡すようにしましたが、変に生真面目なところがあり、全部やらないといけないと思ったようです。
本人一人では取り組めないし、親がつきっきりでも長時間かかります。
わからないと苦痛で、やりたくないけどちゃんと提出はしたい、ストレスで余計疲れてしまいます。
いろいろ話し合って、できるところだけ本人が考え、残りは答えを写し書きするというところで落ち着きました。
ですが漢字練習などは自分で書くしかなく、時間がかかって苦痛ですし、親のほうもプリントをコピーして、本人が取り組める問題以外の答えを全部記入して写し書きできるように準備したり、横に付いて一緒に考えたり、毎日大変な作業でした。はじめのうちはまじめに取り組んでいたものの、だんだん嫌になってくる息子に、自分で決めたことは守ろうとおしりをたたくことが本当の意味で大変なことでした。

 

3~4年生になると学習面での困難さが厳しさを増していきます。
10歳の壁という言葉があります。子どもの発達段階において、周囲と自分を相対的に見られるようになり、友達と自分を比較して、自分にはこれができないという劣等感を持つ時期です。周囲と自分を相対的に見られるようになったという成長の証でもありますが、子どもがこの劣等感を受け入れないでいると、一時的にでも強くなったような気分を味わいたいがために、ほかの子に意地悪をしたり、言葉遣いが悪くなったり、集団でいたずらをするといった行動に出ることがあります。またこの年頃は「ギャングエイジ」とも呼ばれ、親から離れ、友達と集団で行動したがるようになります。
息子もお友達も「ギャングエイジ」真っただ中、学校では毎日、朝自習の時間に漢字の10問テストが行われていました。
息子は記憶力が弱く漢字がろくに覚えられません。いつも一緒に遊んでいる友達から、悪気はないのでしょうが、「そんなのもわからんと?」などと言われて嫌な思いをしていたようです。
ある日、家で宿題をしていると急に「みんなは何でもすぐにわかるのに、なんで俺だけわからんと?俺は頭がバカなんだ!」と大声で泣きだし、頭をこぶしでたたきます。
私は胸が苦しくなり、どう声をかけたものかわからないまま、その時の衝動に駆られて息子の脳の障がいのことを話してしまいました。
生まれてきたとき小さく生まれてきたこと、お母さんのおなかにいるときに栄養や酸素がうまく届けられなかったせいで、脳に傷がついてしまったことなどを話し、あなたの頭の中のコンピューターの一部が壊れてしまっているから、みんながすぐに解ることがわからなかったり、覚えられなかったりするんだよと説明しました。
頭をけがしていることは、あなたのせいではない。あなたは何にも悪くない。
足をけがしている人は杖を突いたり、車いすに乗っていたりして、周りの人も足をけがしているんだなとわかるけれど、あなたの頭のけがは見ただけではわからないから、お友達は自分と同じなのに何でできないんだろうと思って、嫌なことを言う人もいるかもしれないけど、傷ついた脳で考えているあなたは、ほかの人の何倍も頑張っているのだから、それはすごいことなんだよと話しました。
結果、障がい告知のようになってしまいました。息子はショックを受けた様子で静かに考えているようでした。私の言葉をどんなふうに受け取ったのか、どの程度理解できたのか気になりながら時間が過ぎていきました。
2~3日後、息子が帰宅するとこんなことを言い出しました。
「お母さん。学校に来てみんなに俺の頭の傷のことを話して!傷のことはショックだったけど、話を聞いたらみんなも俺のことを分かってくれると思う!」
これは、どうしたものか・・・と思いましたが、担任の先生に経緯をお伝えすると、ありがたいことに授業の時間を割いて、私が話をする機会を作ってくださいました。
クラスのお友達みんなに話を聞いてもらいました。息子に話した内容と同じようなこと、みんなと一緒に勉強するためにものすごく頑張っていることを話しました。
先生からは人間の脳について、人間はまだ脳のもつほんの一部の働きしか使っていないこと、脳には秘められた能力がまだまだたくさんあることなどのお話をしてくださいました。

クラスの子どもたちがどんなふうに受け止めてくれたのかはわかりませんが、その後は息子はすっきりした様子で、お友達が嫌なことを言わなくなったと伝えてくれました。朝の10問漢字テストは続いていて苦戦していましたが、ある時、家に帰ってくるなり「お母さん!今日ね、漢字めっちゃ難しくて1つもわからんかったけん、0点と思ったけど、1つ合っとったよ! 1点とれたけん!」と嬉しそうに報告してくれました。
学習面だけではありません、日常生活、対人関係、難しく大変なことは様々あります。ですが、漢字のたった1点をこんなに素直に喜ぶことができるってすごいことだと思って、本当に嬉しかったのをおぼえています。

 

障がい受容、告知に関することは非常にデリケートで難しい問題です。
発達障がいの親の会の方から聞いたお話では、一概には言えませんが、告知は親がするのはよくない。専門の医師にしていただくのが一番良いと伺いました。私の息子は知的障がいで情緒面の困難さは低く、思慮も浅いので10歳のころの告知のような出来事が割とスムーズでしたが、私の息子の場合はたまたまうまくいった例です。

 

さて、小学校高学年は、中学校に向けて考えていかなくてはいけません。
中学校となると通常学級在籍はもう無理です。
息子に支援学級の在籍を受け入れられるようにどう進めていったらよいのでしょう?

それでは  また次回。

児童発達支援センターおひさま  児童発達支援事業  一山