若草学園の実践ブログblog

気持ちいいな。楽しいな。できた。

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3歳のT君は、言葉でのコミュニケーションは少なく、思いが伝わらないと寝転がって手足をバタバタさせて「ギャー」と泣いてしまいます。「おねがいでしょ」とお願いの言葉と一緒にサインをしてみせると手をパチンと叩いて「がい!」と自分のお願い事を伝えてくれる時もあります。お昼寝をしにお部屋に向かっている時でした。落ち着かずソワソワしている様子で遊戯室のドアを開けて欲しいと私の手をグイグイ引っ張ります。ギャーっとなる寸前です。「遊戯室に行きたいなら『お願い』だよね。」とサインを見せて話しかけるとちょっとだけ手を合わせて「がい・・」。「わかった。ピッピが鳴ったらおしまいね。」と約束をして遊戯室に入りました。気持ちが通じた事でT君は途端に笑顔になって走って行きました。

床には色んな感触の足型が並べてありました。その足型を踏みながら「ん~気持ち良い~」と言っているかのような表情です。「これをしたかったのか。何で今?」と疑問に思いましたがその時、T君が欲しかった刺激だったのでしょう。

人工芝の足型、ペットボトルのキャップを並べて貼り付けてある足型、プチプチの足型、ふわふわの足型を踏みながら足裏で色んな感触を楽しんでいました。ひとつひとつの足型を丁寧に踏み進めながら好きな感触と嫌いな感触を区別しているようでした。

3分程でタイムタイマーの音が鳴ると「T君、ピッピがなったね。おしまいね。お昼寝しようね。」と声を掛けると満足して手を私の方に伸ばして「抱っこして」のサインです。「T君抱っこ『お願い』は?」とサインと一緒に話しかけると「あーん」と言いながら手を小さくパチンとしてくれました。ほんのちょっとの時間のやり取りですが、大切なやり取りとなりました。

 

もう一つ。T君の足の裏から入った色んな感覚刺激はT君の脳に伝わっています。刺激を感じることは体と心にとって大切な事です。人が環境に対して適応的な意味のある反応を起こす為には目や筋肉、耳、皮膚から絶えず入ってくる刺激を脳が、まとめる必要があります。その一連の処理過程を感覚統合といいます。感覚統合は私達と環境(外界)をつなぐシステム、脳と体の動きを統合する役割を果たします。感覚統合の分かり易い例として挙げられるのが「バケツにつまずいた時、転ばない為にどの様な感覚が使われているでしょうか?」という場面です。水の入ったバケツにつまずいた瞬間に体と脳がその環境に適応的な意味のある反応をします。《触覚つま先で感じるツン・視覚「あっ、バケツ」・聴覚「ガッシャン!」

前庭覚(平衡)「おっとっと」・固有受容覚(筋肉や関節に感じる)グッと踏ん張る。》

 子ども達が色々な刺激をスムーズに統合されていることで適切な行動が取れるようになる為には、日常生活の中で「心地よい、快感、楽しい、達成感」を繰り返し経験していく事が大切になります。遊びを通して感覚統合がスムーズに行えるようサポートをしていきたいと思います。           (*参考文献 感覚統合Q&A 共同医書出版社)

放課後等デイサービス おひさまぷらす 吉田広子