白川の里の実践ブログblog

「心に寄り添う」

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平成29年から約4年間担当しておりましたご利用者が先月12日にうちの施設にご入居なさいましたので、そのことについてお話したいと思います。

 

A様は平成2年に脳出血で倒れ、左麻痺の後遺症があります。

車椅子の生活で息子様夫妻や訪問介護、デイサービス等の支援を受けながら、在宅生活を続けていらっしゃいましたが、年を重ねるごとに身体機能が低下し、家族介護の負担も大きなものとなっていきました。

今まで、ご家族に対してきつい言葉や態度が出てしまい、この何十年も優しさを表現されることがありませんでした。入居を勧められると、ご本人は「親を捨てるのか・・」と息子様達を大声で叱責されたり、特にお嫁様に対しても罵声を浴びせられることも度々ありました。

ご家族の希望は、施設への入居なのですが、「本人がとても嫌がるから・・」と入居の順番が来てもこれまで何回か断られていましたが、そういう状況でも、家庭の事情で年に1度だけはショートステイを利用されていました。

今年のお正月には、ショートステイ利用後自宅に帰られたのですが、その後はデイサービスに行くのも嫌がられ、お風呂に入ることができなくなってしまいました。

訪問看護や訪問介護のスタッフが声掛けしても、2度とデイサービスには行かないと・・頑なに利用を拒否されていました。

このころには息子様夫妻が自宅でのトイレ誘導も負担が大きくなり、大変お困りの状態でした。

しかし、ある時なぜか?「白川の里のお風呂は良かった・・」との話が出て、再びショートステイをご利用することとなりました。

その時なぜ、再び行く気になられたのか・・誰もはっきりとした理由は理解ができなかったのですが、白川の里の何かを受け入れるものがあったのだろうと思います。

ご家族はお母様の入居を強く希望されたのですが、入居の条件には、ご本人の承諾が必要となります。息子様夫妻が来所され、「又断るだろう・・」とひやひやしながら、お願いされている時、お母様ご本人の口から「ここは優しい人ばかりだし、良くしてもらっている」と話し始められ、

「これからは、ここでお世話になるから夫婦2人仲良くしてね・・」その上、お嫁様に対しては「息子をよろしくね・・」と穏やかな表情で言葉をかけられ、施設への入居を承諾されました。

少しびっくりしたお嫁様は「結婚して28年、母から初めてあんな言葉をかけてもらった・・」と驚かれていたご様子でした。息子様は「母はいつも母屋に一人でいて、寂しくてかえってストレスだったのかもしれません。皆さんに優しく良くしてもらって、母が変わったんだと思います。本当に皆様に感謝します。」との言葉を頂きました。

 

今は施設で穏やかに暮らされています。

この件を通して、人の心を動かすものは何だろう?と私なりに考えてみました。

おそらく、その方の内面・深層心理は表面上では図り知れないもの・・

例えば、繊細で傷つきやすい心持の人は、他人にそれをわからないようにちょっとしたことで傷つけられないようにと、他人に強い態度をとることがあると聞いた事があります。

この件は、施設を利用した際の雰囲気がとても気にいられて、頑なな心を和らげて、怒気を溶かす一つのきっかけになったのかもしれません。

やはり人の心を動かすのは、人の優しさなのだと私は思います。

 

白川の里には、施設独自の素敵な理念と物理的・ケア的な環境、時間や空間があると思います。

今後もご利用者やご家族の心の内面に寄り添うことのできる支援を心がけていきたいと思います。

                       居宅介護支援事業所   春間 久美