高校生のAさんは3月に卒業を迎えます。
夏頃までは「早く学園を卒業したい」「卒業したらもう会いに来んけん」などと言っていましたが、実習を重ね、就労先が決まったあたりから少しずつ不安を口にするようになりました。
「卒業した後大丈夫かな…」「上手くやっていけるかな…」と表情も暗く、時には涙したり、イライラしては周りの子に八つ当たりしたりと、情緒不安定な日々が続きました。ネガティブな言葉が増え、自分に目を向けて欲しい行動も見られました。
出来る限りAさんと話す時間を多く作り、不安な気持ちを受け止めました。話す時は、Aさんが今まで頑張ってきたことや強みをたくさん、課題や頑張って欲しいことを少し混ぜ合わせながら…。話を聞く時間を重ねる中で、少しずつ自身を見つめ直し、向き合っていく姿が見られました。将来に不安を感じながらも、希望を持てるような言葉に変わってきました。
「卒業したからって学園とさよならじゃないよ。何かあったらいつでも連絡して欲しいし、何もなくても連絡して欲しい。時間がある時は遊びに来て欲しいし、顔を見せて欲しい。私たちはいつでもAさんのこと応援してるよ。」と伝えると、Aさんは涙を流しながら、「ありがとう。やっぱり卒業しても会いに来るけん!みんなにお土産持ってくるね!」と嬉しい言葉が聞かれました。今ではネガティブ思考のループから抜け、Aさんらしい生活を送れています。
学園には思春期の子も多く、「うるさい」「黙れ」「しゃべんな」など、悲しい言葉を投げられることもあります。悲しい気持ちを抱えつつも、伝えるのには理由があり、その理由として
*あなたのことを大事に思ってるからこそ伝えている。今の経験が将来大きな力になること。
*将来あなたが困った時、悩んだ時に助けてくれる人、頼れる人がいて欲しい。楽しいこと、幸せに感じることがたくさんあって欲しい。
ことを伝えています。
私たちは子どもたちが社会に出た時、先を見据えた関わりを大事にしています。今は分かってもらうことは難しく、うるさいと感じることがたくさんあるかもしれません。学園では40名の子どもが過ごしている為、様々なルールもあります。でも、それは家庭でも同じことです。家族間であれど、ルールはあると思います。卒業した後、「あの時言われてたのはこういうことだったんだな」「自分のことを思って言ってくれてたんだな」って思ってもらえる日が来た時、私たちが大事にしてきたことが証明されると思ってます。
学校での生活、学園での生活の中で子どもたちは様々な悩みを抱えることがあります。一人ひとりに寄り添いながら一緒に解決策を見出し、将来に向けて必要な力を付けていけるよう今後も丁寧に支援していきたいと思います。
入所部 宇藤