私たち、療育現場で働くスタッフには、子ども一人ひとりの特性に関する知識と専門的な技術の提供が必要となります。
しかし、専門性を身に付ける前にとても大切なことがあります。
それは…“自立を考える視点”です。
現在、ABA(応用行動分析)、TEACCHプログラムや臨床動作法 など、多くの療育技法が広がっていますが、ただ単にこれらの技法を学んでも、実際の療育現場では、活かされないこともしばしば…。
どの技法にも共通しているのが、実際の訓練に入る前に、『その子の状態に応じた自立を考えたアセスメント』が丁寧に行われていることだと思いますが、このアセスメントが画一的だったり、担当者一人の所見であったりする場合は、効果的だといわれている療育技法をどれだけ取り入れても、本当の自立支援とは言えないと考えています。
それは日常生活動作一つをとっても同じだと思います。以前、研修会に参加をした際に、とても心に残った理学療法士さんの話があります。
例えば、トイレの自立を考える際、通常、和式・洋式トイレに行って自分で排泄できるか?という所を単純に考えてしまうと思いますが、姿勢・運動の視点からの分析ということで…
まず、その子自身、尿意や便意はあるか?自宅のリビングや居室からトイレまで一人で歩いて移動することができるか?トイレについたらドアの開閉・施錠は一人でできるか?(ドアノブの回内、回外が可能か 摘まむ、握るが可能か)、ドアを閉めて便座の前で空間を上手に利用してズボンやスカートの着脱が可能か?その際に立位の保持やバランスは大丈夫か?用を足す際、座位の保持は可能か?用を足した後、トイレットペーパーを適量取ることができるか?ふき取りの際はバランスを崩すことなくふき取ることが可能か?・・・等々、『トイレの自立』一つを考えただけでも多くのことを学習し動作を獲得しなければなりません。
子ども一人ひとりの現在の発達段階を考え、トイレの一連の動作で、ドアの開閉に課題があるという分析結果が出た場合は、個別学習や集団遊びの時間に楽しく取り組める回内・回外の遊びの機会を多く取り入れる等、ピンポイントアプローチと並行して、『自立を考えた一連の動作の獲得を考えた支援』を行っていくことが大切であると思います。
勿論、その際、発達課題のメカニズムを知っている必要はありますが、いきなり専門技法を取り入れるのではなく、しっかりと見立てていき、どのようなアプローチがその子にとってベターなのか?ということを考えていく必要があると思います。
【子育ての根本】
子育ての根本は100年前から何も変わっていない。
それは… 《食べさせて、着せて、寝かせて、大きくすること》
つまり… こどもの『健康と生命を守る』ために、「気を配り」、 「手をかけ」、「目を離さず」にいる。
中川信子 氏(言語聴覚士) 母子保健2016年8月号「ことばの獲得」 より
我々、支援者の役割は、『子どもを親(家族)が育てていくことを支える』
児童発達支援センターおひさま 河野 光輝