若草学園の実践ブログblog

しあわせなとき

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 いつもせわしなく暮らしていると“幸せ(しあわせ)”のことなど考える余裕もありませんが、休みが続いたある日、ふと、私にとって、幸せとは何だろう、いつだろう、と考えることがありました。

 みなさんにとって幸せとは、どんなことで、どんな時に感じますか。

 人により幸せは、それぞれで違いがあると思いますが、私には、幸せは大きく分けて2つのものがあると思えます。一つは、予約待ちのチケットが当たって見に行くことができたとき、欲しいものが手に入ったとき、仕事がうまくいったとき、特別な料理がお店で食べられたとき、どこか行きたいところに出かけられたときなど、何か物事が成しどけられたときの幸せです。今なら「GO TO キャンペーン」を利用して、この幸せが近づいた、実現したという方もいるのではないでしょうか、(ちなみに、私は利用していませんが…)

 もう一つは、日常生活のなかでおいしいご飯が食べられたとき、通勤で運転中に道を譲って笑顔でお礼されたとき、子どもたちが笑顔で手を振ってあいさつしてくれたとき、何かしてあげて感謝されたときなど、日常にある小さな幸せです。

 1つめの幸せは、自分の“のぞみ”がかなった時の幸せといえますが、この幸せはよい意味では次に向けて頑張ろうとする意欲にもつながりますが、それが達成できたからといって満足できるもとはいえず、次の新しいのぞみ(欲)が生まれてくるもので、きりがありません。

 2つめの幸せは、当たり前のように日常の中に数多くあるものです。しかし、この幸せは同じ事を体験していても感じ方は人それぞれで、そこにある幸せに気づかないと分からないものでもあります。

 このように、幸せは考え方、感じ方ひとつで違ってくるものです。なので迷ってしまうことがあります。

 そんな時、目にしたのが、

 道元禅師の四摂法(ししょうぼう)という言葉です。

 四摂法とは、

「布施」(ふせ)…精神的、物質的に得られたものを独り占めせず、分かち合うこと。

「愛語」(あいご)…優しく愛情のこもった親しみと思いやりのある言葉をかけること。

「利行」(りぎょう)…見返りを求めない人のためになることをする。

「同事」(どうじ)…相手と同じ心・境遇になって、物事を行うこと。

 この四つを行なうことで、人は幸せになれるというものです。これは菩薩の精神であり、人を幸せにしないかぎり、自分の幸せは得られないというものだそうです。

 また、宮沢賢治は『雨ニモマケズ』の中で、次のようなことを言っています。「…東に病気の子供あれば、行って看病してやり、西に疲れた母あれば、行って稲の束を背負い、南に死にそうな人あれば、行って怖がらなくていいといい、北に喧嘩や訴訟があれば、つまらないからやめろといい…」まさに人のために行う、四摂法の考えを表したものだといえます。

 もう一つ、「情けは人のためならず」ということばがありますが、使われた方も多いのではないでしょうか。

それでは、ここで問題です。

意味は、次のどちらだと思われますか?

(ア) 人に情けを掛けておくと,巡り巡って結局は自分のためになる

(イ) 人に情けを掛けて助けてやることは,結局はその人のためにならない

平成22年度の「国語に関する世論調査」では、どちらの意味か問われた結果は次のとおりとなっています。

(ア)8%、(イ)45.7%

ほぼ半分です。

<文化庁月報 平成24年3月号(No.522)より>

※この意味は、辞書などに書かれているものは、(ア)の「人に情けを掛けておくと,巡り巡って結局は自分のためになる」となっているようです。

この言葉は、5千円札の肖像にもなっている新渡戸稲造が作ったものです。原文(大正4年の『一日一言』に掲載)を現代語にすると「情けを掛けるのは他人のためではなく、自分自身のためにかけるものだ。自分が他人にしたことは忘れていいが、人からしてもらったことはずっと忘れてはいけない」ということになります。つまり、「情けは、自分の心を慰めるためにかけるもので、見返りを求めるものではない」、ということです。今使われている意味とは少し違っているようにも思えますが…、これも四摂法の精神にあたる言葉だと思います。

 さらに、アンパンマンのことばにも四摂法の精神があります。

「泣いている人、困っている人、お腹がすいた人、みんな僕の顔を食べると、ニコッと笑顔になるんだ。その笑顔を見るとね、嬉しくて僕も自然に笑顔になる。そしてね、ここ(胸)がとってもあたたかくなるんだ」

「困っている人を助けた時に、こころがあたたかくなって、そのときわかったんだ。僕が何のために生まれてきたのか、何をして生きていくか、何が僕の幸せかって…」

 私には菩薩様や宮沢賢治の四摂法の精神に至ることやアンパンマンのように自分の顔を食べさせることはできませんが…、新渡戸稲造の言う、「情けは人のためならず」やアンパンマンがいう「困っている人を助けた時に、こころがあたたかくなる」は出来そうな気がします。まずは、身近な人へ、四摂法のうち、一つでもできることをやっていき、自分が幸せになれたらいいなと思っています。

放課後等デイサービス おひさまぷらす

治部田