若草学園の実践ブログblog

握りしめる手の優しさ

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学園で過ごすR君。9年前に出会って、新卒で学園に就職した私は、最初の頃はどう関わっていいかわからず四苦八苦していたのを今でも覚えています。当時小学生だったR君も、私の関わり方が嫌だったのか、食事の声掛けは来てくれずにいたり、歯磨きの時にはぷいとそっぽを見たりとなかなか心開いてくれませんでした。どうすればいいか色んな先輩方と話したりアドバイスをみたりして、なんとか一緒に遊んでくれたり、おんぶをしたら移動するようになったのですが、いざ声掛けなどの支援するとなるとまだまだ上手く行かなかったり・・・という日々を過ごしていました。

 R君はその頃トイレで排泄せず、何度も失敗するという事がありました。決まった時間で誘導しても行きたがらず、時々成功はしていても、多くの時は暫くすると失敗している・・・の繰り返しでした。排泄失敗の前後にどんな前触れがあるのか気になり観察していると、足で床に置いてある物を蹴り出したり、靴箱から靴を全部床に散らかしたりとする姿が見られ、その後失敗している・・・という事が多い事に気づきました。その為散らかしている時に「トイレ行こっか。」と声掛けをすると、トイレで座って排尿が出来ました!その時に推測が当たって「R君、出来たね!すごい!」とても喜んですごく褒めたことを今でも覚えています。

それから散らかした時にトイレに誘導、を何度も繰り返していると、中学生になった位から、トイレをしたい時にちらかす事をせず、自分から私を探して手で引っ張って「トイレに連れてって。」というような素振りを見せてくれるようになりました。この時期にはすでに成功する事の方が多くなっており、声掛けで誘導すると手を握って一緒に行く、着替えで服の前後が分からなくなった時も手でとんとんと合図して教えてくれるようになるなど、自分から意思表示が出来るようになってきていました。このことはまた一段と喜んだ私でした。

今年でR君は高校生となり卒業を迎える年になりました。今でもトイレや食事の誘導で手を引っ張って教えてくれ、外への買い物に出かけた時もしっかり手を握ってきます。あの時、初めてトイレ誘導に成功した時に比べると手も大きくなり力も強くなっているはずですが、手を握りしめる力は昔から優しく握ってくれており変わっていないように感じます。それがR君なりの私へ信頼や優しさの表れなのかな?と思いながら毎日関わる事を楽しみにしている今日この頃です。

 

入所部 松尾