S君は、中学2年生です。
片付けが大の苦手です。
1人部屋で生活していますが、足の踏み場が全くない程、荷物やゴミで溢れていました。
私は、4月に部署移動で入所部に来た時から、S君に片付けを通して何か支援が出来ないかと考えていました。しかし、苦手な事をいきなり指摘されて行動が変わる人はいるでしょうか?
少なくとも私は変われないタイプの人間です(笑)
これは長期戦だ‼️
時間をかけていくぞ‼️
と決意したのはまだ春の事でした。
私の作戦は次の通り。
①まずは、S君に話しかけて存在を知ってもらう!
②S君の好きな事、得意な事を見つける!
③②の手助けとなる行動をする。(S君は、絵を描いたり、製作が好きなので、休日や祝日の昼間、自由時間に使える様に、工作の材料をみんなで遊ぶ部屋に持っていきました。)
④信頼関係が出来始めたら、少しずつ苦手な片付けについての話題を出し始める。
⑤④について、どうしたら少しでも頑張れそうか話し合う。
⑥⑤で話して決めた事を実行する。(約束はしっかり守る。)
⑦⑥の結果をS君と共有する。
8月の⑤の話し合いで、色々と思いを聞いた所、「自分はどうせ出来ないからしたくない。できない。」という言葉ばかり。「一緒にしてあげるから頑張ってみない?」と言っても聞き入れてくれませんでした。話をしていて、片付けができない事以前に、幼児期から大人に認められたり、大人と一緒に何かをして達成できた!と感じた経験が少ないから、「どうせ僕なんか…」という言葉が出てくる自己肯定感の低さが気になりました。(中学生になると特に男の子は思春期に入り、幼児期の様にどうしても素直に相手の言葉を聞き入れる事ができません。だからこそ、より慎重に言葉掛けには気を配りました。)
まずはそこを解消したい!と考えました。S君が私の姿を見るだけでも効果が出ると信じ、片付けている姿を見せていく事にしました。
若草学園では、平日は9時半〜10時まで、掃除の時間です。
S君は、月曜日〜金曜日は学校に行っているので、掃除の時間は学園にいません。出勤して掃除の時間に片付け始めましたが、それだけが業務ではないので、1人で実行するにはとても時間が足りない!
私も人間です。「助けて下さい。手伝ってくれませんか?」とお掃除や洗濯専門で来て頂いている私よりもずっと年上のパートさんにお願いをしてみました。快く承諾して下さり、私も1人ではない嬉しさで作業がはかどり、あっという間に足の踏み場が出来、2人で喜びました。パートの方ともなかなかコミュニケーションが取れないので、S君について話したり、業務について話をする良い機会となりました。(パートさんもS君の部屋の汚さは気になっていたそうです。
ですが、子ども支援が業務ではない為、遠慮されていたという事がわかりました。気になった事はどんどん伝えて下さい!とお願いしました。)
S君が帰って来て部屋を見た時、私は近くにいなかったのですが、
本人が私だと分かった様で、すぐにお礼を言いにきてくれました。
その日に、片付ける場所をわかり易く視覚支援を用いて伝えてました。そして、S君は、まだたまにお漏らしがあり、それを言えずに押し入れに隠す様になっていたので、洗う物を入れるカゴを部屋の入口に準備して、恥ずかしい事ではない!とにかく!ここに入れよう!後はしてあげるから!と伝えました。
それから約1ヶ月間、S君が学校に行ってる間に私やパートさんが片付ける日々。そして、帰ってきたら、「部屋がきれいだと気持ちいいよね!」と声をかける。シャツ1枚でも片付けた形跡があったら少しオーバーに褒める。事を続けました。10月に入り、少しステップアップしてもいいかな?と思える瞬間があったので、声掛けに「こちらからの要求」という変化を加えました。「S君、床に置いているシャツやジャンバーだけは自分で片付けてみてね。できない時は言ってきてよ!そのままにはしないでね。」始めは、全く出来ていなかったので、どうして出来なかったのかの振り返りを行いました。「だって、きつかったもん。」S君の言葉に変化が見えました。以前は、どうせ僕なんかと言っていたのに、今は、できなかった理由が言えている‼️
嬉しい変化です。
「それは仕方ないね。じゃあ、きつくない日は頑張ってね。」と常に焦らず。
そして先日、最高に嬉しい瞬間が来ました。
「部屋を見に来て〜!」と言うので見にいくと、それはそれは綺麗に片付けであるのです。
少しとぼけて「わぁ。きれい!誰が片付けた?」と言うと、少し照れて「ぼく。」とS君。近くにいた幼児さんや高校生のお兄ちゃん達にも部屋を見てもらい、「すごーい!」「やるじゃん!」という褒めの言葉のシャワーをたくさん浴びとてもニコニコしていたS君。
夜に片付けをしたそうです。
学校の先生からも最近は落ち着いていると褒められているそうです。
片付けを通して、違うところでも変化が見られた事は、とても幸せな事です。自分が褒められた様な気分にもなります。
片付け1つでも支援には時間がかかります。時には挫けそうになる事もあります。
しかし、そんな時は、自分の仕事は何なのか?(子ども支援)、若草学園の理念は何なのか?振り返り、やるべき事を確認します。
S君への支援はこれで終わりではありません。引き続き、「観察、見守り、褒め」を忘れずに、S君の状態に合わせてステップアップさせながら援を続けていきます。
入所部 江藤