若草学園の実践ブログblog

日日是好日

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学園で仕事を始めて5ヶ月余り、毎日のように子どもたちと接して行くうちに自分では少し慣れてきたのかな、子どもたちのことも理解できたのかなと思っていました。しかし、個性豊かな子どもたちはそんなに甘くはありません、正直に思ったことは口にするし、思いもよらない行動に出る事もあります。そこでは自分の未熟さを痛感することがあります。

 そんな中、先日、数年ぶりに映画館で「日々是好日」(にちにちこれこうじつ)という映画を観る機会がありました。この映画は、森下典子さんの「日日是好日 『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」を映画化したものです。彼女が茶道教室で体験したことをエッセイにしたもので、茶道を題材にしたものなので派手さはなく、時折、クスッと笑える場面もありましたが、迅割と心にしみてくる映画でした。この映画を観ているうちに、日常生活や学園での子ども達との関わり方について、今の自分の思いと重なるものがありましたので、今回はこのことについて考えみたいと思います。

 タイトルとなっている「日日是好日」とは、中国の雲門禅師が云われた禅語に由来するもので、直訳すれば、「毎日がよい日だ」となりますが、本当の意味はそのような単純なものではないようです。雲門禅師は、日常生活ではうまくいかない事や失敗する日もあり、決して「よい日」とは呼べないような日でも「日々是好日」であると云っています。つまり、生活の中では辛いこともあれば楽しいこともある。ただ、表面上の事柄だけを見て過ごすのではなく深く見つめて行くことは自分自身にとって意味あるものとなる。人はどうしてもうまくいく時と行かない時を比べてしまいがちですが、悪いこと(失敗)が起きても、そのことを、どう受け止めていくのかが大切だというのです。つまり、あるがままを素直に受け止めていくことで、悪い日でも好い日と捉えることが出来る。どんな状況でも逃げることなくその状況を受け入れられるようになれば、毎日が好日になっていくというものです。

 映画を観ながら自分と子どもたちとの関わり方の参考となる点がいくつかありましたが、そのうち3点を紹介したいと思います。1つ目は、主人公の黒木華さんがお茶を習い始めた時は「知らないことばかり」で戸惑うという場面がありました。自分もまだまだ子どもたちのことは知らないことがたくさんあります。でも自分が「知らない」ということを素直に自覚し、教えてもらう気持ちで接していくことが気負いなく子どもたちとの関係を築ける気がします。2つ目は、茶道は「頭で考えようとしないこと」、茶道のお点前は手が勝手に動くと言われるほど練習することと言われています。これは知識として知っていても、それを使えなければ(自分のものとなっていなければ)役に立たないということです。子どもたちとの関係でも、あれこれ考えるよりいろんなことを試していくうちに良い方法が見つかることがあります。とはいうもののこれは一長一短にできるものではありません、多くの失敗を重ねて自分のものとなるのではないでしょうか。また、人は成功した時の体験より失敗した時のことを思い出し消極的になりがちです。そんな時は3つ目の「今に気持ちを集中し、時を待つ」ことを心掛けること。映画では生活の中で嫌な出来事があるとそれが雑念となり今まで出来ていたことが出来なくなる、できないとそれが焦りとなる悪循環のようなシーンがありました。自分も子どもたちとの関係がうまくいかず悩むことが多くあります。ある日、いつも突っ慳貪な子が親しげに話しかけてくれた時は何だか嬉しくなりました。このように今のあるがままを受け入れて、時を待つことも大切だと考えさせられました。

 お茶の世界では、自然の移り変わりを五感で感じ、つながることが大切であるとされていました。私もこのように季節や景色を感じられる余裕をもって、心広く子どもたちと接していきたいと思う今日此頃です。

 

入所部  治部田 均