子どもの脳をいかに守るか
虐待をはじめとした親(養育者)からの『不適切な養育(※マルトリートメント)』が子どもの脳を傷つけることが明らかにされました。※『マル=悪い トリートメント=扱い』
児童相談所への虐待通告件数が、昨年度調査では15万9,850件と過去最多となっています。
乳幼児期の親のかかわり方が子どもの人生を変えます
脳は、1歳で大人の約70%に成長し、4歳までに95%まで成長すると言われています。
これほど、幼児期の子どもの脳の育ちは大切なのです。
人間の子どもは、生きていくために、大人の「養育」を必要とします。その養育には、愛情とぬくもりが必須です。しかし、実際には身近な大人と愛着(絆)が結べないまま成長していく子ども達が非常に多く存在します。
これはNG!子どもにやってはいけないこと『ワースト5』
〈1位〉 体罰、言葉の暴力
厳しい体罰は、犯罪防止力や感情、意欲に関わる前頭前野の容量が20%変形・委縮するという調査データがあります。また、言葉の暴力による脳へのダメージは、体罰よりもはるかに大きく、「心因性難聴」や「運動性失語症」などの原因になります。叱りつけたり、非難するだけでなく、はやし立てる、侮辱する、嘲笑する、おとしめる、批判する、過小評価することも大きなダメージに。言葉の暴力を繰り返すと、脳の聴覚野が変形し、自己肯定感の低い子になります。
〈2位〉 ながら育児
子どもにスマホやタブレットを渡して、インターネット画像を見せたりゲームをさせておく親御さんも多いと思いますが、長時間、こうした機器から発せられる映像を見続けると、右脳と左脳をつなぐ脳梁という部分が細くなり、コミュニケーションや感情をコントロールする能力が低下します。園や小学校で集団行動ができない子になってしまうことも…。
〈3位〉 他の子と比べる
きょうだいや他の子と比べたり責めたりすることは、子どもの自己肯定感や自尊心を著しく低下させ、脳の聴覚野だけでなく喜びや快楽を感じる線条体を変形させます。健全なコミュニケーション能力が育たない上、いじめやDVの被害者になったり、「自分のせいでこうなった」「自分がすべて悪い」と認知がゆがんでしまい、意欲低下にもつながります。
〈4位〉 子どもを支配する
親の言うことは絶対で、常に従わなくてはいけない、あるいは、親の価値観を押しつけるといった主従関係は、子どもに大きなストレスをもたらします。ストレスが長期的にかかると、扁桃体が過剰に興奮し、副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールが大量に出て、脳に悪影響を及ぼすほか、子どもは常に親の顔色をうかがい、嘘をつくようになります。
〈5位〉 子どもの前で夫婦げんか
夫婦喧嘩やきょうだいへの暴力・暴言などを子どもの目の前で行う面前DVは、視覚的・聴覚的に子どもの記憶に残り、視覚野の容積が6.1%も小さくなります。視覚野の容積が小さくなると、相手の表情が分からなくなり、対人関係に支障をきたします。殴る・蹴るなどの身体的DVと怒鳴る・ののしるといった暴言DVの内、脳に影響があるのは、むしろ暴言の方。身体的DVに比べて6倍もの悪影響があることが分かっています。
これは、8月5日、熊本市で行われたDV防止セミナーでご講演頂いた福井大学子どものこころの発達研究センター教授である友田明美先生の資料から抜粋したものです。
子どもを健全に育てるためには、親が健全であることが求められます。しかしながら、時代の変遷とともに、母親の7人に1人が、抑うつ傾向にあるとのデータも出ています。いわゆる「子育て」が孤立化し、閉塞的になって、『弧育て』が増加しているのです。育児困難に悩む親たちを社会で支える仕組み作り「とも育て(共同子育て)」が必要なのです。
また、発達障がいの特性も被虐待児も同じような症状を呈することがある為、しっかりと見極める必要があります。私たちは、相談支援を通して沢山の大人の方と出会います。現代のように分からなかった障がいもあり、時代背景から、上記のような虐待を受けながら育ってきた大人が、今子育てをされています。親のなにげない言動が子どもの脳を傷つけていることが分かった今、虐待のスパイラルを断ち切ることが必要です。
将来を担うかわいい子どもたちには、自立した生活を送って欲しい!社会の一員として、自分らしく豊かに暮らしていって欲しい!と、親であれば誰もが願うことだと思います。
私たち相談支援センターいちばん星は、これからも保護者の応援団として、ペアレント・プログラムや子どもの発達セミナーにエネルギーを注ぎつつ、幅広い人々の相談支援を行っていきたいと思います。
相談支援センターいちばん星
伊豆野 良栄