若草学園の実践ブログblog

発達過程を知る

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『療育事業所』=『専門的な事業所』と言われますが、では、何がどのように専門的なのでしょうか?

おひさまでは、毎年、4月に2日間の新任職員研修を行います。
法人のあゆみや法人理念、社会福祉制度(特に療育に関係する分野の制度)の変遷、発達特性の基礎理解、対人援助技術(子どもとの接し方、言葉遣いの基本)、社会人としてのマナー等について学んでいただきます。

この新任職員研修で特に大切にしていることは、『標準的な発達過程を知る』ということです。

 個人的には『標準』という言葉や『定型発達、非定型発達』という言葉は好きではありません。
それは、人は自分と似た価値観の人はいたとしても、自分という人間は、唯一無二の存在であるからです。

 みんな違ってみんないい!・・・・・・でも、本当にそうでしょうか?

 私たち療育者は、こどもの個性・主体性・可能性を大切にしながら、こども自身が持っている個々の力が発揮できるよう、自立に向けた発達支援を行います。

 自立に向けた発達支援??? どうやってプログラムを組み立てる???
 プログラムを組み立てるベースは???

 そうです。本人の個性ばかり目を向けていると、本当に必要な発達支援のプログラムを組み立てることが困難になってしまいます。

 そこで大切な視点が『標準』『定型』ということです。病院のお医者さんが、患者さんのレントゲンを見て、病気を発見できるのはなぜでしょう?
 きっと、お医者さんは、異常のないレントゲン画像を徹底的に目に焼き付け、時には記憶だけでなく、正常なレントゲン画像と比較したりしながら病気を発見し、そのほかの検査データと照合した上で、その時々で最善と思われる治療計画をたてると思います。

 私たち療育者は、お医者さんのように病気を見つけて治療することが仕事ではありませんが、そのプロセスは良く似ていると思います。
 こどもには発達過程というものが存在します。私は、療育に携わる者は、この発達過程を常に頭に入れておかないといけないと思っています。

 以下、保育所保育指針解説書から抜粋したものになります。
【おおむね6 か月未満】
✤ 誕生後、母体内から外界への急激な環境の変化に適応し、著しい発達が見られる。
✤ 首がすわり、手足の動きが活発になり、その後、寝返り、腹ばいなど全身の動きが
活発になる。
✤ 視覚、聴覚などの感覚の発達はめざましく、泣く、笑うなどの表情の変化や体の動
き、喃語などで自分の欲求を表現し、これに応答的に関わる特定の大人との間に情緒
的な絆が形成される。

【おおむね6 か月から1 歳3 か月未満】
✤ 座る、はう、立つ、つたい歩きといった運動機能が発達すること、及び腕や手先
を意図的に動かせるようになることにより、周囲の人や物に興味を示し、探索活動
が活発になる。
✤ 特定の大人との応答的な関わりにより、情緒的な絆が深まり、あやしてもらうと
喜ぶなどやり取りが盛んになる一方で人見知りをするようになる。
✤ また、身近な大人との関係の中で自分の意思や欲求を身振りなどで伝えようとし、
大人から自分に向けられた気持ちや簡単な言葉が分かるようになる。
✤ 食事は、離乳食から幼児食へ徐々に移行する。

【おおむね1 歳3 か月から2歳未満】
✤ 歩き始め、手を使い、言葉を話すようになることにより、身近な人や身の回りの
物に自発的に働きかけていく。
✤ 歩く、押す、つまむ、めくるなど様々な運動機能の発達や新しい行動の獲得によ
り、環境に働きかける意欲を一層高める。その中で、物をやり取りしたり、取り合っ
たりする姿が見られるとともに、玩具等を実物に見立てるなどの象徴機能が発達
し、人や物との関わりが強まる。
✤ 大人の言うことが分かるようになり、自分の意思を親しい大人に伝えたいという
欲求が高まる。
✤ 指差し、身振り、片言などを盛んに使うようになり、二語文を話し始める。

 このように、こどもの成長には発達過程があります。
 私たち療育者は、保育所や幼稚園等の先生たちとは違い、発達や社会生活を送る上でなんらかの課題のあるこどもと関わっています。
 新任職員からすれば、それが当たり前なのですが、状況によっては、標準的な発達過程を知らないで、療育現場で仕事をすることにもなります。

そのような状況では、適切な支援のプログラムを作成することはできません。現在のこどもの状態を的確に把握するためには、こどもが今どの発達段階にあるのか?ということを知ることです。そうすることで、より効果的な療育を提供することが可能となります。
 自閉症スペクトラム等の障がい特性を知ることも大切ですが、まずは、同年代と比較して、今のこどもの状態がどこに位置しているのかという基本的なことを熟知することが先だと考えています。そうすれば、自然に障がい特性に応じたより深みのある学びができると思っています。
 そのため、新任の先生には、発達プロセスをしっかりと覚えるようにと振り返りをする度にお話しするとともに、新任職員研修においてもそのことを伝える事を大切にしています。

 今年度も残すところあと少しとなりました。令和2年度も新任の先生が入職されます。
新しい風を期待しつつ、若手に負けないよう、常に学びの精神でこどもの自立を応援していきたいと思います!

児童発達支援センターおひさま
       河野 光輝