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「障がい受容」

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「障がい受容」、この言葉は、障がいのある子どもを持つ保護者に向けられる言葉です。
子どもの「障がい」が分かった時(診断を受けた時)、どれほどのショックを受けているでしょうか。

 

今から50数年前、日本は「自閉症児は、親の育て方が悪い」と言われていた時代がありました。
その後、アメリカでの報告の後20年数年が経過した頃「脳の器質的な障がい」である事が分かりました。

 

私が療育セラピーの仕事を始めたのは、25年前(平成7年)26歳の時です。
当時は、療育の先駆けとなる時代であった為、「療育を行えば、(自閉症が)治る(良くなる)」と、自閉症の子どもを持つ保護者は、藁をもすがる思いで子どもを連れて来られました。

療育セラピーという職業でありながら、何もかもが初めての事ばかり。
新人の私は、米国のテンプル・グランディンさんやドナ・ウィリアムズさんなど、当事者の書いた書物や脳科学や自閉症の歴史、専門書など、たくさんの書物を読む事が課題になりました。

医師でもあり、重度の自閉症の息子を持つ故 田中稔先生から学ぶ事は奥深く、様々な療育技法の研修や運動発達理論等を学ばせて頂きました。現場での実技実践や専門書を読んでのチーム議論等、毎日の療育実践と同時に、毎週行われる職員会議に向けて、たくさんの課題が与えられました。
本当に目まぐるしい日々を送っていましたが、振り返ると人生で最も深く勉強した時期だったと感じます。

療育現場での実践と専門知識の習得は、折り重なるように理論と実践がマッチングしていき、即子どもの障がい理解に繋がっていきました。

しかし、当時は、「子どもの療育」にばかり視点がいき、「保護者の心のケア」までは意識ができていなかったのです。
その当時から、子どもたちの療育をしながら保護者面談(療育相談)を行っていましたが、
「子どもは療育施設に通い、重度の自閉症の診断があるのだから、保護者の障がい受容は出来ているもの」だと思っていました。

恥ずかしいことに、保護者からのコメントを気にしながらも、きっと子どもの事が中心だったと思います。

私が、印象に残っているお母さん達からのメッセージを紹介します。

「伊豆野先生、うちの子パニックが多くて本当に大変だけど、寝顔を見てるとね、、、
もしかしたら、朝、目が覚めた時には、普通の子どもになっているんじゃないか…って思うのよ」
「朝起きたら、“おかあさん、おはよう!”って、言ってくれないかしら」

重度の自閉症の娘を持つお母さんより、
「一家に1人、自閉症の子どもが生まれたらいいのに、、、」

多動で発語のない自閉症の息子を持つお母さんより
「たった一度でもいいから、“オカアサン”って私を呼んで欲しい」

「私、息子と普通に会話している夢を見たんです!」

成人・重度の自閉症の息子を持つお母さんより、
「伊豆野先生、私やっとわかりました!25歳の息子と私(母親)は、別の人格なんですね!」
「息子が指導されていると、私が悪いんだと思っていました。そうではなかったのですね!」

「普通の子だったら、今頃、伊豆野先生みたいな彼女がいたんだろうなーって思います…」

 

私自身、今でも忘れられない、大切にしたいお母さん達からのメッセージです。
障害の程度に関係なく「少しでも良くなって欲しい!」と、お母さんたちは可愛い子どものために毎日一生懸命です。

 

「障がい受容」の過程は、個人差はあれ、長い年月をかけて少しずつ少しずつ、ショック→否認→悲しみと怒りを繰り返しながら、→再起へと進んでいくといわれています。
子どもが成人しても、子どもを思う親の気持ちはいつの時代も変わりません。

子どもに寄り添うことはもちろん、どのような状況であっても保護者を受容し、子どもを取り巻く保護者や環境すべてに目を向け、子どもに関わる周囲の方の応援を大切に相談支援に励みたいと思います。

 

                                         相談支援センターいちばん星

                                                伊豆野 良栄