若草学園の実践ブログblog

ソーシャル・スキル・トレーニングVR<エモウ>の体験会を終えて・・・

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前回のブログの文末に、放課後等デイサービス職員向けに、VR機器をつかったソーシャル・スキル・トレーニングの体験会を行いますとお知らせいたしました。今回は体験会を終えての感想をお伝えしたいと思います。
emou「エモウ」は、学校生活における対人関係の中で、ソーシャルスキルが必要な様々な場面を、高精細VRで再現するツールとなっています。専門医の監修もうけているとのことでした。
相手の目線や表情、言動を通して体験型トレーニングを行うことができるプログラムであり、ワークシートやロールプレイではこれまで再現できなかったリアリティをVR体験として、いつでも何度でもプログラムの中で提供できるため、良質なSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を実施することができるという内容でした。
 プログラムの中には以下のようなコンテンツが48本準備されていました。
【注目】友達との会話(1対1) 【共感力】喜怒哀楽の読み取り
【ジェスチャー】文脈に応じた物を摂る 【対人認識】必要な相手を選んで話す
【トラブル対応】ケンカをしたら? 【距離感】話す時の物理的な距離感 ・・・など

 デモ機を装着してコンテンツを選択し体験してみました。確かにリアリティはあるがVR機器の使用に慣れていない為か、目から入ってくる刺激に違和感がありました。軽い船酔いをしたような感じです。
 内容は学校生活で想定される場面が設定されており、モデルの芝居も上手で臨場感があり、事前に練習をしておくと実際の場面でよりスムーズな対応ができるようになるかも知れないと感じました。しかし、対人関係においては、事前にプログラミングされた内容通りには進まないものです。
 私たちは、様々な環境要因によって、その時々の状況をみながら複数の選択肢の中から総合的に判断し反応します。また、その反応も相手の反応に応じて臨機応変に対応しなければなりません。人間の脳の仕組みは全て解明されたわけではないため、AIが人間の変わりになれないのはこういった対応が求められるからだからかも知れません。
 気配を感じることができる人間の大切にしていきたい部分を再確認できた瞬間でもありました。
勿論、体験会を通して大きな収穫もありました。それは、福祉人が苦手としている領域、客観的なデータに基づく検証です。
 このEMOUという機器は、こどもが体験している内容を自動でスコア化してくれるという優れた機能がついています。例えば、学校の先生が黒板の前に立って子どもたちに授業の内容について説明している場面があります。その時、こどもがどこを見ているのか?という視線がスコア化されます。そして、場面が終了した後、職員が操作しているタブレットにスコア化したデータがすぐに反映され、こどもと一緒にどこを見ていたのか?説明を聞くときはどこを見ると良いのか?ということを画面を通して共有することができます。
 こどもを数字で評価することが苦手な先生が多いのですが、「最近、良くなったよね」とか「最近、○○ができるようになったよね」などという感覚的な評価ではなく、何をどうしたから変化があったのか?○○できるようになったのは具体的にどのようなアプローチをどの期間どの頻度で取り組んできて変化したのか?その成功率は何パーセントなのか?というような客観的な事実が必要であり、そういった事実を積み重ねて評価することが私たち専門職には求められているのではないかと思っています。
 もう一つ、EMOUを活用することで、短時間ではあるが、職員の経験や技術に左右されることなく、新人スタッフでもこどもたちに対して一定の質が担保できるというメリットがあります。

 体験会を終えて2ヶ月が経過しようとしています・・・。悩んでいます・・・。
 機能的には今まで取り組んだことのない領域に挑戦できるので、導入する価値はあると思っているのですが、今はEMOUの内容というよりも、VR機器を使用することによるその他のネガティブな影響の情報を自分の中で否定できる材料がないことでとても悩んでいます。
 導入事例やその他の不安材料に関する情報を収集し、整理して方向性を決めることができればと思います。。。

児童発達支援センターおひさま
河野 光輝