若草学園の実践ブログblog

自己決定やコミュニケーションの素地を作る…

カテゴリー:若草学園の実践ブログ

<理解できるように働きかけよう>

 私たちが生活をしている社会の中では、コミュニケーションの多くは『言語』という手段を通して行われますが、言葉で指示してもなかなか理解出来ない人は大勢います。

 そのような人たちに対しても多くの人は、なんとか理解してもらおうと言葉で伝えようとします。残念ながら、知らない外国語を何度聞いてもなかなか理解出来るものではありません。

 

 学生時代、約1ヶ月間のホームステイを経験しました。知っている単語を組み合わせれば、ある程度のリスニングはできるつもりでいましたが、私がホームステイを経験した国は、オーストラリアのなまりの強い英語が生活言語として使われている田舎町で(このブログをオーストラリアの方が読まれていましたらスミマセン…)、ホストファミリーが訴えている内容がほとんど理解できませんでした。私が理解できるように、ホストファミリーがゆっくり気持ちを込めて分かりやすく話してくれていることは理解できましたが、どんなに気持ちを込めて分かりやすく話をしてくれても、そもそも、言葉の理解ができていない私にはその内容は伝わってきませんでした。。。

 

 話しは本題に戻りますが、コミュニケーションをとる場合、『相手が理解できるレベルで伝える』ということが必要であると考えています。そのため、内容を分かりやすく伝える工夫が必要です。

 今回は重度の身体障がいのある子どもさんに対してのコミュニケーションとして、以下の2つの方法をお伝えできればと思います。

 

(1)言葉以外のモードを利用する

 声かけだけでなく、体をゆすってみる、匂いをかいでもらう、物を見せるなど、あらゆる感覚で伝えてみるといいのかなぁと思います。「ごはんですよ」と伝えても理解出来ない子どもに対して、その匂いや実際の料理を見せると理解出来ることがあると思います。

 

(2)伝えることを分割してみる

 例えば、「プールに行こうね」という働きかけを言葉で理解してもらうことが出来ない場合,他のモードを利用すればどうでしょうか。しかし、実際にはプールを他のモードで伝えることも簡単ではありません。こんな時は、プールに行くという行為を以下のように分割して伝えると分かりやすくなるかも知れません。

1.車椅子から降りる

ベルトをはずし、腰を抱えて「プールだから車椅子から降りようね!」と伝えて、様子を観察する。

2.着替える

「水着に着替えようね」と言いながら服を脱がし、その途中で様子を観察する。

3.プールサイドで水を足にかけながら「水に入る?」と尋ねながら様子を観察する。

 それぞれのステップで拒否の反応が出ればその行為が嫌なことが分かるので、そのステップで中止する。受け入れの反応があれば次のステップに進む。何もなければ10秒程度待ってもう一度聞く。それでも無反応であれば次のステップに進む。

 この様に、スステップに分けることで意思の汲み取りが正確になり、彼らの反応に適切にフィードバックすることにもなります。

 この方法はすべての場面で使えるわけではありません。しかし、簡単な指示場面等では有効性は高いと考えています。もちろん、この時も、言葉かけをしながら話すことは重要です。状況を理解し、そこに言葉があることで、言葉の意味が理解できるようになると思います。

 

 相手が理解できるように働きかけるということは、実際の支援場面や日常生活の流れの中ではなかなか上手くいかない場合があります。しかし、私たち支援者は、子どもの最善の利益を考え、どうすれば、彼ら彼女らが自分らしい自立ができるのかを考えて丁寧に関わり、その技術を日々高めていく努力をしなければならないと思っています。

 

『昨日の正解は今日は不正解』という気持ちで来年度も形に捉われず、子どもの状況に応じた柔軟であり、エビデンスのある支援を展開していきたいと思います!

 児童発達支援センターおひさま

                             河野 光輝

 

*今回添付している画像は、放課後等デイサービスで取り組んだマジックハンドの活動です。

職員の手作りのマジックハンドです。電子工学等の専門家から見れば、改良点は山ほどあると思いますが、子どものことを考え、創意工夫し、子どもができる機能を活用し、その時間を共有するということはとっても大切なことではないかと思います。