16時になり、早速T君から「ゲーム機貸してください!」と来た。私は時間を確かめ「はいはい」とゲームボックスを渡しその中からT君は好きなものを取っていった。しかし、すぐさま戻ってきて「ドライヤー貸してください!」と言ってきた。T君はお風呂上りのようでまだ髪が濡れたままだったのだ。恐らく誰かに言われたのでしょう。私は「そうね、髪を乾かしてからゲームしようか」と一旦ゲーム機を預かりドライヤーを渡そうとした。するとT君はプイッと怒りドライヤーを受け取ることなく他の子がしているゲームを覗きに行った。「髪を乾かすなんて2~3分のことじゃないね。終わったらゲーム機貸すよ」と言うも知らん顔。「あ~あ~そうしている間に時間が過ぎて好きな事が出来なくなるんだけどね~」の声もとうとう届かずだった。
一方我が家で。 とある土曜日、私が仕事から帰るなり娘から「今日は無駄な一日を過ごした~」と悲しげな表情で告げてきた。訳を聞くと、日頃お世話になっている動物病院へ去勢の予約をしたかったのだが、結局電話が出来なかったというのだ。彼女は昔から電話が大の苦手、掛かってくる電話には何とか意を決して出るようになったが、掛けるとなると数日前から体調が悪くなるほど悩むことがあった。そういえば数日前に「去勢の予約をしたいけど(猫)、何て言い出せばいいと?」と聞いてきた事を思い出した。24歳にもなって・・・と思いつつこう言えばと具体的に教えたのだが、その後、何度も何度も頭の中で練習をして休日の土曜日に備えていたのだった。私(大半の方)からしたら数分で出来る簡単なことなのに、彼女にとっては1日を無駄にするほど、いや数日前からだからもっとということになるが、たった1本電話をかけるという行為が日常生活を脅かしている・・・と思った。最近はネット予約が多くなって電話をかける機会がなかったのだろう。こういう子にはとても便利なアイテムなのだが、いざという時に困る。 さ~て どうする 娘!
そこで提案したのが、「電話が無理なら直接行って予約したら?往復しても30分程度よ。1日を無駄にするより合理的じゃない?」「わざわざ来られたんですか?と思われるかも・・・」
と心配する娘。「『通りついでに来ました』か何か言って誤魔化しても何も思われないよ」と私。娘は「そうね~」と意外とあっさり納得した。しかし、また1週間後となると予約がいっぱいになるからと結局私が予約することで無事完了したのだが・・・。
確実に「電話恐怖症」。勿論そんな病名があるわけないが、克服するには時間がかかりそうだ。それよりそこに時間をかける必要があるのだろうか。娘も社会に上手く順応していく為に自身の弱点と向き合い日々模索している。自身で解決できる別の方法を早い段階で見出せたら、自分の時間をもっと有意義に楽に過ごせるのではないだろうか。選択肢を広げ柔軟に対応できる能力は必要だ。もう暫く見守っていこう。
ところで、冒頭のT君は結局ゲームの時間は終わり、その後私の側を着いて回る。何か言いたげだが何も言わない。私は洗濯物を収めに幼児室へ行き「何か用事ですか?」と尋ねた。T君は小声で「さっきはごめんなさい・・・」と。「いやいや謝って欲しいなんて思ってないよ。失くしたのは私の時間ではなくてT君の時間だもんね。結局ゲームできなかったね。これからはやることやって楽しい時間を過ごせるといいね」と伝えている間に早速他の事に気を取られるT君。 ん~ 少しは話が届いておくれ~。 気を取られるのは早いのに、気持ちの切り替えが課題。生活のルールとしてではなく、自分の時間を楽しく過ごしていく為の方法として考えられるように。まだまだこれからも支援し続けます。
入所部
クレメンツ由美