NHKの番組に「ドキュメント72時間」という番組があります。
このドキュメンタリーはどこか、とある場所を決め、定点観測的な撮影と取材を丸3日間、延べ72時間に亘って行い、様々な人間模様を映し出す番組です。
先日プレーパークを取材した回の放送を見ました。
プレーパークとは1943年デンマークの造園、設計家のC・Th・ソーレンセンがコペンハーゲンに造った「がらくた遊び場」で子供たちが自由な発想で遊ぶことのできる、ただ古タイヤを積み上げただけの公園がプレーパークの始まりです。
日本では1979年東京、世田谷区の羽根木プレーパークがオープンして全国に広まりました。
番組では川崎市の子ども夢パークを取材していました。
ここは市の施設でNPOやボランティアで運営されています。大人のプレーリーダーが常駐していてボランティアの人たちもサポートしています。決まりがなく禁止もなく、子供のやりたいことを尊重しています。
パーク内に入ると1番初めに目につくのが大きな看板です。
[おとなのみなさんへ]
子どもはたくさんのことに好奇心を持ち、チャレンジします。
ここでは子どもたちの「やってみたい!」という気持ちを大切にしたいと考えています。
そのためにプレーパークでは遊びを制限するような禁止事項をできるかぎりつくらないことで子どもたちが自分で決めたり判断できるようにしています。
また、自然の素材や廃材、道具や工具を使って子どもたちの発想で遊べるような場づくりをしています。
遊びの中では小さなケガをすることもありますが子どもはその経験を通して危険から身を守る力を身につけていきます。
私たちスタッフは日常、点検を欠かさず行なっていますが気になる事がありましたら教えて下さい。
みんなで一緒に楽しい遊び場をつくっていきましょう
と書かれています。
取材されたのは雨の多い3日間でした。
雨が降れば外に飛び出て雨の時の過ごし方があります。
手作りのウォータースライダーの先には大きな水たまり、子どもたちはどろんこになって遊びます。
近所の保育園の子どもたちも遊びにきます。
まるで泥の国からやってきたみたいです。
ある親子はお母さんもうずうずがたまらず水に飛び込んでいました。
お母さんは不登校などを否定する気持ちはなかったそうですが、いざ自分の子どもが学校に行けなくなると、すんなりとは受け入れられずどうして良いかわからなくなってしまったそうです。プレーパークに通うようになって、お子さんも、少しずつ表情も良くなり、のびのびと過ごすことができて、お母さんも人と違うこと、予測できないこと、その変化を楽しめるようになっていると言われていました。
学校に居場所を見い出せない子どもたちの姿もたくさんあります。
室内ではパソコンを交代で使う事ができたり、みんなで楽器の演奏が始まったり…
ある男の子は、ゲームをきっかけに機械に詳しくなり、動画編集が得意に、自分でYouTubeもやっています。このパークでは他の子を引っ張る立場です。
3年生の頃イジメにあい、死にたいと思ったそうです。ずっとそのトラウマから逃れようとしてきたけれどこのパークに通うようになってようやく薄れてきたと言います。将来のことも自分で考える事ができています。「今は学校には行けないけれど、高校からは行こうかなと思っている。就職のことも考えないといけないし」やさしく、たくましく、必死で生きています。
創作活動のスペースではボランティアの方が木工制作のサポートをしてくれます。
黙々と作業をする男の子の前には、作品が並んでいます。泥粘土で作った動物。ボランティアのおじさんがこの子は天才といいます。
ジオラマを作るのが得意です。言葉でのコミュニケーションは見られません。学校に行かなくなり、家でお母さんと2人、閉塞感でしんどくなり、自傷、他害が増えていたそう。パークに通い始めて1年半少しずつ落ち着きを取り戻しているそうです。
お母さんの言葉が胸に染み入りました。
「自分の心を一番楽にしてくれたのは、このまんまのこの子が素敵だよっていう、そういう人たちのまなざしだった。
この子と一緒にいると恥ずかしいこともいっぱいあった。謝ることとかもいっぱいだし、このまま2人で消えてしまいたいなと思ったこともいっぱいあるけど、でも、もし生まれ変わったとしても私の息子で生まれてきてほしいなって思う。」
「こういう場ってありがたいなって思います。」
おひさまもこんなふうに思ってもらえる場になれるといいなと思います。
児童発達支援センターおひさま 児童発達支援事業 一山