若草学園の実践ブログblog

スローステップの大切さ

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先日の十五夜のお月様はとても綺麗でしたね。それからすぐ10月に入り、朝方は肌寒く空も風もすっかり秋らしくなりました。

 
下半期に入り、児童発達支援センターおひさまは、おもちクラスのグループ活動の再編成や、子どもたちの個別支援計画の前期モニタリング・評価、後期の個別支援計画作成の真っ最中です。
その中でも、春からあずきクラスを利用しているA君は大きなチャレンジ時期を迎えています。
この秋から、入園やおもちクラスのグループ活動への本格的な参加を予定しているのです。
 
5月の利用開始当初は、お友達とのやりとりの経験の少なさから手が出てしまったり、給食ではごはんとスープ以外食べることが難しい様子でした。スケジュールがいつもと違うと、受け入れるのが難しく、涙で怒りを表現することもありました。ところが、「見て、理解する/真似する」ことが得意で、どんな活動にも意欲的に参加できる強みをもつA君は、言語訓練や、視覚支援ツールを使ったコミュニケーションで意志疎通を重ねるうちに、半年で好ましい行動が格段に増えたのです。ここで、チームで実践した具体的な支援内容をご紹介します。
 
 
【支援①】
目標達成したらシールが貼れる、給食がんばりカードを作った。(写真参照)
【結果】
シールがモチベーションとなり、苦手なものでも「一口だけがんばろう」を受け入れるうちに食べられる食材や量が増えた。完食してお代わりすることも増えた。
【コツ】
少しの工夫でAくんが達成できそうな目標を発達段階に合わせてスローステップで設定し、イラスト等を使って説明(共有)した。
(例)
 ・目標1 ごはんとスープ以外も一口食べよう
 (↑達成が定着したら次のステップ↓)
 ・目標2 1/3量に配膳したごはんやスープのお汁だけでも完食しよう
 (↑達成が定着したら次のステップ↓)
 ・目標3 すべてのお皿に一口でも手をつけよう
 
 
【支援②】
Aくん用に個別でスケジュールボードを作った。イレギュラーな日程の日は朝のうちに事前説明をした。
【結果】
動揺や怒ることがなくなり、スムーズに受け入れられるようになった。
【コツ】
朝と、イレギュラーな活動の直前の2回伝えておくとより情報が入りやすい。イラストや絵カード、流れを表す矢印のマグネットを使うと、より使いやすく伝わりやすい。
 
 
お友達とのやりとりも、「かして、だよ」「手伝って、だよ」と職員が声かけをしながら練習するうちに上達され、ご家庭や外出先でも般化されているとお聞きしています。
想いを伝えられずもどかしい時には、職員に助けを求められるようにもなりました。
どの支援にも共通する大事なコツは、スローステップで達成しやすい目標設定と、出来たらしっかり褒めることだと思います。
 
新しい環境や新しい生活リズムなどは、どんなお子さんでも、私たち大人でもそわそわしたり戸惑ったりしますよね。
さらにおひさまを利用される子どもたちは、手先の不器用さや、行動や気持ちのコントロールの未学習(または誤学習)から、失敗経験による不安を感じやすく自己肯定感も低いといわれています。
そんな状況や心境のなか、子どもたちに伴走しながら私たちが出来ることは「できた!」「伝わった!」の経験を一緒に積み重ね、たくさん褒めることです。その先にある、成長を一緒に喜べる感動が、私のお仕事のやりがいになっています。
 
最後にひとつエピソードを。
なかなか給食を食べ進められないAくんに、上の写真のようなイラストを見せ「この絵みたいに、お皿をどれかひとつピカピカにしよう」伝えた時のこと。
皿よりも男の子の姿に目がいったようで、フォークとスプーンを両手に持って得意気に真似してみせるAくんでした。
見て真似る得意技で、周りを笑顔にしてくれたAくん。
引き続き、Aくんらしい成長を促す支援を、チームで考え実践していきます。
 
 
 
児童発達支援センターおひさま 藤本