唐突ですが、東京大学先端科学技術研究センターの中邑先生が主宰する異才発掘プロジェクトROCKETの現地講師を務めさせていただいてからというもの、私は教科横断的学習について関心が高まり、お呼びがあれば講師をホイホイ引き受けてしまうようになりました。
ROCKETの時、私が阿蘇で関わったプロジェクトは「人は火山からできている」という哲学的なプログラムでした。
ROCKETのプログラムより
全国から集まった浮きこぼれと揶揄されるような子どもたち、その子たちをアテンドするステキな先生方、それに地元の火山学者と私。
みんなを車に乗せて火山をテーマに阿蘇の各地のフィールドへ出かけました。
水によって磨かれた岩、風によって不思議な形に変化した岩。どれも火山噴火の影響で堆積したものが長い年月で固まって岩石になり、それが風化して不思議な風景を作っています。
地面に目を向けると、地層の表面に黒い層があり、阿蘇の草原の野焼きで炭化した植物が長年にわたる野焼きによって、粘土層の上に新しい地層を形成していくのが分かります。
みなさんが知っている阿蘇の米塚も実はスコリア丘という小さな火山噴火の跡なんです。
スコリアを観察できる貴重な場所。触るときは気をつけて。植物や石は持ち帰らないでくださいね。
そんな米塚を見た後は、その中身を見たくなるのが人の常。米塚を破るわけにはいきませんので、その近くにあるスコリア丘の断面が見られるところに行って、実際にマグマが冷えて固まった岩石(溶結凝灰岩)を手に取ってじっくり観察したり、お昼は米塚をモチーフにした「たかなめし」をみんなで食べて地域の食文化に触れたり。
そんな感じで火山をテーマに、歴史・地学・化学・物理学・数学・哲学などあらゆる分野にみんなの興味関心は広がり、最初は戸惑っていた子どもたちも自分の興味のある分野になると大人顔負けの知識で活発なコミュニケーションが始まりました。
このときの経験で、私も子どもたちと地域をフィールドに学ぶことに目覚めてしまったんです!
まちたんけん
最近は、地元小学校から依頼があったときに行うまち探検や地域体験活動の講師を受けています。
まち探検はある特定の学年の小学生と校区内の各地区をその地区の人と一緒に回って子どもたちに地域の良さを伝えるプログラムです。
地域体験活動は小学校1年から6年生までの各地域の全児童と地域で行う体験学習です。
今回は、まち探検の活動をご紹介します。
まち探検では、小学校から子どもたちと歩きながら、いろんなところに目を向けるように声をかけます。
去年の活動では、まずカーブミラーについてみんなに問いかけます。
実はカーブミラーは日本で発明されたらしいのですが、どこの会社だったとか、記録が正確に残っていないという不思議なものだったんですよ。
普段の生活に当たり前にあるもの、でもそのルーツを辿ると思わぬ事実が隠れていたりする。
そんな好奇心を育むためのきっかけづくりをしています。
まちたんけん2021:低学年向けのパンフレット①
駅に来れば点字ブロックがホームにありますが、みんなに質問すると意外と何のためにあるのか分かりません。
そんな時は実際に目をつぶって点字ブロックの上を歩いてもらい、そこから再度質問します。
そんな体験を通じてノーマライゼーションやダイバーシティの話をすると障がい者に接したことがない子どもたちでも具体的に視覚障がいの大変さや点字ブロックの大切さを理解することができます。
うちの地元のJRはまだ電化されておらず、みんなが電車と呼ぶ乗り物は実は大津駅までで、そこから東はディーゼル車なんだよって話をし、電車とディーゼル車の違いはどこにあるのか?実際に車両がホームに到着したときにみんなに質問します。親が理系のご家庭では電車と汽車を厳密に区別して読んでいたりして面白いです。
とりあえず手を上げるだけの子もいれば、一生懸命考えて何かを言おうとしている子もいたりして、教室の中では発言しない子どもたちが外に出て好奇心を少し刺激するだけで、活発に意見を言えるように変化します。
学びたい気持ちさえあれば、教室であっても、外であっても関係ないってことにみんなが気づいてくれる瞬間がとても楽しいんです。
この活動を通して、子どもたちに地域のことを知ってほしい、地元や熊本を好きになってほしい、そしていつか地域のために貢献したいという気持ちになってほしい、そんな欲張りな考えで講師を務めさせていただいておりますが、実際は子どもたちにどんな面白い話をすることができるか、毎年プログラムを考えながら、教材づくりを通じて自分自身が地元学を深めて行っております。
まちたんけん2020のパンフレット:青面金剛のお話(絵が下手ですみません)
そんな感じで上記のようなパンフレットを作って配布していますが、校区外から移住してきたご家族や若い世代のご家族にも地元のことが学べてよかったって言っていただけるので、やっててよかったと苦労が報われます。
熊本地震以降は、大災害が起きたときどこに避難すればよいか、どこに行けば湧水があるかなど、生きた防災教育もプログラムに取り入れ、子どもたちの生きる力や立ち直る力(レジリエンス)を育めるような活動にしています。
みなさんもご自分の住む地域で子どもたちとそんな活動に取り組んでみませんか?
ブラタモリを自分たちでやるのって大人も子どもも楽しめて、地元が好きになりますよ!初めてでやり方がわからない時は、いつでもご相談ください。
ワイワイガヤガヤ、子どもたちと楽しみましょう!
書を捨てよ、町に出よう!by寺山修司
相談 井芹